ごあいさつ
「最後はヒトでっしゃろ」は、ドラマ『下町ロケット/ヤタガラス編』(原作池井戸潤)における帝国重工の藤間社長による名セリフですが、30年程医者をやった後に社長になって14年目を迎えた私は、「会社は、最初からヒトでっしゃろ」と言い換えたいです。
私はこの13年間人との出会いに恵まれ、色々なアドバイスをいただき、現在この人手不足の時代に、(16名ほどの小さい会社ですが)素晴らしいスタッフが揃ってくれたことに感謝しています。勿論、退職される方はいらっしゃるのですが、更に素晴らしい人が入ってきてくださり驚いています。
思えば、13年前55歳で医者から社長になった時、それまで医者でしかなかった私は「領収書」は聞いたことがあるが「見積もりって何?」というレベルでしたので、「まず商品に番号を付けろ」と言ってくれた幼馴染の社長、また「人を集めるのには10年かかるぞ」と諭してくれた高校同期の社長もいました。
そして私の社長人生の最大の指南役は、伊藤忠商事(株)の元常務で、当時シーアイ化成(株)の会長のKさんです。Kさんは社長業を全く知らない私のために、シーアイマテック(株)、北海道サンプラス(株)、(株)ヨコビの社長様方を登別に集めてくださり「大谷会」なるものを3年に渡り開いてくださりました。この3年は新人社長にはとてもいい勉強になりました。
そしてKさんの言葉で1番驚いたのが「君は、社員が成功すれば大いに喜び、また失敗すれば大いに悲しみ、3年間は『寅さん』を観ながらゴルフでもしてなさい」と言う言葉でした。これはつまり「3年間は何もするな」ということで、「社長になったんだから何かしなくては」と焦っていた私には衝撃的で、かつ誠に有り難いお言葉でした。
“寅さんの3年”が過ぎ、私は“手術”を始めました。手術とは「膿を出したり、悪いところを切除し、いい臓器を移植する」もので、私は手術がとても好きな外科医でしたが、それは対象が会社になっても同じでした。
2000年初め頃、都立病院では「インシデント・レポート」なるレポートを導入し、システム・エラーを炙り出し改善していましたが、私はこのインシデントレポートを会社に導入し、「檻のない動物園」と言ってもよさそうな“個人商店の集まり”を会社らしくしていきました(昨年迄のレポートは51件になります)。
また、外科はチームワークを特に必要とされるのですが、大学病院時代からカラオケはその重要な手段でした。年2回の宴会には二次会カラオケが付いており、コロナ禍でも大部屋を貸し切り「安全な者だけで行くカラオケボックスほど安全なものはない!」などと言って、やり続けました。
また、「先輩看護師を新人看護師の前では、絶対怒ってはいけない」という先輩医師の言葉を思い出し、会社にも当てはめました。
10年が過ぎ、昔社長友達の言った「人を集めるのに10年かかる」という言葉が現実のものになってきました。
現在、77歳と73歳のハウス建てのレジェンドが2人がいますが、更に一昨年88歳まで働いてくれた施肥設計のプロの遺産も引き継ぐべく、現在、農協金融30年の専務、千葉工業大学ネットワーク学科卒の課長、若いが人をまとめる力のある営業課長、そしてタイヤ事件で世間のバッシングを受けた時その修羅場にいた係長が揃いました。また最近、23歳、24歳の若い女性YouTuberも入り、友人の言ってくれた「人を集めるのに10年かかる」という言葉を実感しています。
ところで、私は2022年に北海道農業資材商業会(北農商)の会長を引き受けたのですが、この会の究極の目的はビニールハウスの被覆材を適正に処理しCO2を削減することです。会長を引き受けたのは、娘の影響です。娘が9歳の時、家族で米国コネチカット州に住んでいたのですが、私が室内灯を付けっぱなしにしていると後から付いて来て「もったいない」とか言ってスイッチを切っていました。娘は大学で環境土木学科へ進み、環境・エコに興味があり、SDGsも娘から初めて聞きました。
一昨年2024年に、伊藤忠商事の北海道支社長様が旭川の弊社本社にいらっしゃり、牛のバイオガスプラントのことをお話になりました(写真のはめ込み)。その時私は牛のことはA2ミルクのことしか知りませんでしたので、「なんで私に牛なんですか?」とお尋ねしたところ、伊藤忠の先輩から、「北海道に行ったら大谷に会うように」と言われたそうです。
私はこの時、14年前にお世話になった伊藤忠元常務のKさんに恩返しできるかもしれないと思いました。北農商会長という立場を利用して、この地球温暖化を抑えるバイオガスプラントを紹介することは、決して会の趣旨に反しないと考えたからです。事実、主に牛のゲップ等から排泄されるメタンはCO2の28倍の温室効果があり、地球温暖化を防止するにはCO2に並んで、削減しなければならない温室効果ガスです。
このバイオガスプラントはベルギーのBiolectric社が開発、フランスのNaskeo環境社が買い取り、日本では伊藤忠商事が販売しています。このプラントでは、牛が排泄するメタンは一切外部には放出されずに、すべて可燃燃料としタービンを回し発電するもので(再生可能エネルギーなので高く買い取ってもらえます)、牛乳も飲めて地球温暖化防止に貢献できる画期的なものです。このバイオガスプラントのことを北海道経済誌の記事に書いていただき、北農商と(株)旭川ビニールのHPとインスタで宣伝しました。14年前にお世話になった伊藤忠の元常務Kさんに少しか恩返しができたかな、ととても嬉しい気持ちになりました。
Kさんにお礼ができたのは、北農商の会長をしていたからですが、それは、私が付けっぱなしの電灯のスイッチを切りながら後からついてきた娘のおかげです。「最初からヒト」でした!
株式会社旭川ビニール 代表取締役社長
北海道農業資材商業会 会長
日本医師会産業医
大谷泰一
